研究科は、こういう場所です
研究科は、
普通科の「続き」ではありますが、
ただの延長ではありません。
普通科では
「踊れている状態」を作ることを大切にしてきました。
研究科ではそこから一歩進んで、
上手い人たちと、同じ温度で踊れるか
というところに入っていきます。
サルサの場には、
踊れる・上手い、という段階を越えたレベルの、
その場の中心として踊っている人たちがいます。
そういう人と踊るとき、
こちらが不安定だったり余裕がないと、
相手は自然と「助ける側」になります。
それは優しさですが、
正直に言えば、
ダンスを全力で楽しめる状態ではありません。
研究科が目指しているのは、
その状態を越えることです。
必要なのは、
特別な才能や難解な理論ではありません。
- 基本が崩れないこと
- よく使われる動きに、きちんと対応できること
- 曲に合わせて、少し余裕を持って動けること
それだけで、
踊りの空気は大きく変わります。
同じ動きをしていても、
相手が構えなくなり、
場の流れに自然に乗れるようになる。
研究科は、
**その「余裕が出始めるところ」**を
ゆっくり作っていく場所です。
また研究科では、
サルサを「考える時間」と、
そのまま曲で踊る時間が同居しています。
レッスンではありますが、
毎回なにかを詰め込むわけではありません。
「今日は、ただ踊って帰ったな」
そんな回があってもいい。
研究科は、
サルサとの距離感が一段変わる場所です。
研究科で起きる変化
研究科にしばらく通っていると、
ある変化が少しずつ起きてきます。
踊りが止まりにくくなる。
それだけではありません。
相手が「助ける側」にならなくなっていきます。
これについては、
レッスンで下の級の人と踊ったときの感覚を
思い出してもらうと分かりやすいかもしれません。
「なんとか成立させてあげよう」
「ここはフォローしてあげよう」
そうやって踊れば、
もちろんダンスはできます。
でも正直に言えば、
全力で楽しんで踊っている感じにはなりません。
実はソーシャルでも、
同じことが起きています。
助ける・助けられる、には
はっきりしたラインがあります。
そのラインを超えると、
相手は考えなくなります。
構えなくなります。
上手い人ほど、
そこを敏感に感じ取ります。
研究科では、
その 「助けなくていい側」 に
少しずつ近づいていきます。
そうなると、
踊りの空気が変わります。
教えてもらっている感じでもなく、
面倒を見てもらっている感じでもない。
「一緒に踊っている」
ただそれだけの関係になります。
曲の中で、
そのまま踊れる時間が増えていくのも、
この頃からです。
この変化は、
派手ではありません。
でも、確実です。
気づいたら、
上手い人が
普通に踊っているようになる。
研究科で起きる
いちばん大きな変化は、
そこかもしれません。
扱う内容について
研究科では、
普通科より一段上の、具体的なことを扱います。
知らなくても踊れないわけではない。
でも、知らないと踊りが成立しにくい。
そういう部分です。
特に、
上手い人と踊れば踊るほど、
はっきり差が出てしまうところ。
同じ動きをしていても、
「楽に踊れる人」と
「どこか引っかかる人」に
分かれてしまう部分です。
ひとつは、
上手い人たちが高い頻度で使っている動き。
知らなければ対応できないけれど、
分かってしまえば
特別な才能が必要なわけではありません。
研究科では、
そういった動きを
無理のない形で扱います。
もうひとつ、
研究科で大切にしているのが
曲に乗りやすくなる動きです。
動きを増やすのではなく、
むしろシンプルにする。
その上で、
動きの「溜め」をしっかり作る。
溜めがあると、
曲は驚くほど楽しく感じられます。
さらに、
動きのスピードに
はっきりしたメリハリをつけます。
スパッと動くところ。
しっかり留まるところ。
この「静と動」があると、
テンポの違う曲でも、
リズムが跳ねる曲でも、
無理なく対応できるようになります。
研究科では、
こうしたことを
実際に曲で踊りながら確認していきます。
「こうすると踊りやすい」
「ここがあると助かる」
その感覚を、
体でつかんでいきます。
結果として、
踊りが止まりにくくなり、
相手が構えなくなる。
上手い人と踊ったときの空気が、
少しずつ変わっていく。
研究科で扱うのは、
その変化に直結する内容です。
技術だけのクラスではありません
研究科は、
技術だけを練習するクラスではありません。
踊りは、
技だけで成立するものではないからです。
研究科では、
どう踊るか だけでなく、
どう見えているか
どう関わっているか
という部分も扱います。
たとえば、
- どんな服装で踊っているか
- どんな表情で相手を見ているか
- どういう距離感・振る舞いで場に立っているか
こうしたことは、
意識しないと
そのまま踊りに出ます。
ソーシャルの場では、
技ができるかどうか以前に、
- 誘いやすいか
- 一緒に踊りたい空気があるか
が、かなり大きく影響します。
会場の隅で友達とずっと話していたり、
踊っている最中に相手を見ていなかったりすると、
どんなに踊れていても
次の一曲にはつながりません。
研究科では、
そういった部分についても
はっきり言葉にして話します。
レッスン中に、
少し踊るのを止めて、
話す時間が入ることもあります。
言いにくいことも含めて、
そのままにせず、
ちゃんとディスカッションします。
それは、
誰かを否定するためではありません。
踊りが、ちゃんと楽しくなるため
そして、
相手から自然に踊りに来てもらえるためです。
研究科は、
技術と同時に、
振る舞いも含めて整えていくクラスです。
研究科に居る意味
研究科は、
毎週ソーシャルに行ける人のためだけの場所ではありません。
行けない週があってもいいし、
まだ一人で会場に行くのが不安でも構いません。
サルサに触れ続けていていい場所として、
ここに居てください。
ソーシャルに行かないと、
どうしても踊る機会は減ります。
踊らない時間が続くと、
少しずつ距離も空いていきます。
研究科は、
その間をつなぐ場所でもあります。
「今週は研究科で踊ったからいいか」
そんな週があってもいい。
研究科には、
知っている顔がいます。
同じ時間を過ごしている人がいます。
それだけで、
サルサとの距離は
思っているより離れません。
気づいたら、
引率に付き合ってみたり、
会場で声をかけられたり。
そういうことが、
自然に起きてきます。
研究科に居る意味は、
すぐに結果を出すことではありません。
サルサを続けられる形で持っておくこと。
その中で、
少しずつ踊りが楽になり、
場にも慣れていく。
それで十分だと思っています。
どんな人に向いているか
研究科は、
認定を取ったあと、
次にどう関わっていくかを考え始めた人に向いています。
「もっと技を増やしたい」よりも、
ソーシャルでどう立っていたいか
が気になり始めた段階です。
たとえば、
- ソーシャルに行ってみたい気持ちはある
- でも、正直ちょっと怖い
- 誘ってみて／誘われて、相手が上級者だったときの
あの空気を想像すると足が止まる
そんな感覚を、
どこかで持っている人。
踊れてはいるけれど、
- 曲の途中から
相手が少ししらけている気がした - ちゃんと踊っているはずなのに、
どこか噛み合っていない感じが残った
そういう経験があると、
ソーシャルは一気にハードルが上がります。
研究科は、
そこを一人で抱えなくていい場所です。
研究科は、
「できていない人を直す場所」ではありません。
上手い人と踊ったときに、
空気が落ちにくい側に行くための時間
だと考えています。
ソーシャルで
「ここなら大丈夫」
「この場所は知っている」
そういう
ホームグラウンド感ができるまでは、
なるべく続けてみてほしい。
研究科は、
そのための場所です。
どれくらい関わるものか
研究科は、
短期間で結果を出すためのクラスではありません。
少しずつ、
踊りの空気や、
ソーシャルでの立ち位置が
変わっていく場所です。
目安としては、
しばらく続けてみるくらいの気持ちで
考えてもらえれば十分です。
気づいたら、
- 会場で困らなくなっていた
- 誘う・誘われることに構えなくなっていた
- 「ここなら大丈夫」と思える場所ができていた
そんな状態になっていれば、
研究科の役割は果たせています。
研究科は、
ずっと居続けなければいけない場所ではありません。
でも、
ソーシャルでホームグラウンドができるまでは、
なるべく一緒にやっていく場所だと思っています。
最後に
研究科は、
誰かと比べるための場所ではありません。
上を目指して競うためのクラスでもありません。
サルサと、ちゃんとつながり続けるための場所です。
ソーシャルは楽しいですが、
同時に少し怖い場所でもあります。
うまく踊れなかったらどうしよう。
相手にがっかりされたらどうしよう。
空気を壊してしまったらどうしよう。
そう感じるのは、
ごく自然なことです。
研究科では、
その不安を一人で抱えません。
踊りのことも、
振る舞いのことも、
分からないままにしない。
必要なことは、
ちゃんと話します。
でも、急がせはしません。
ここで過ごした時間は、
すぐに結果として見えるものではないかもしれません。
でも、
気づいたら踊るのが少し楽になっていたり、
会場で構えなくなっていたり、
「ここなら大丈夫」と思える場所が増えていたりします。
それで十分だと思っています。
研究科は、
ゴールではありません。
でも、
通ってよかったと思える通過点には
なるはずです。
サルサを、
無理なく、
でもちゃんと楽しみ続けたい。
そう思っているなら、
研究科はきっと役に立ちます。